アトピー歴.8 ステロイド軟膏も効かなくなった…
ステロイド軟膏で、つるつるすべすべになって、わたしは小躍りしていました。
だって、ごくごく少量、塗っただけなのです。
スゴイ、ステロイド! スゴイ、現代医学! って思いました。
ステロイドはこわい、って聞いたことあるけれど、こんな少量で効くんだから、パッと症状を抑えて、その間に生活や食事を少し気をつけて、根本から状態をよくしていけばいいんだ! と思いました。
肌の状態がいいと、自信が出るし、いろんなことに積極的になれます。
顔がキレイになって、わたしは友だちと会うのも楽しくて、遊び転げていました。
サークルでも、少々頼りないけどよき先輩! として後輩を指導する側に回っていました。とにかく(本来の勉学はさておき)、充実した大学生活を送っていたのです。
このステロイド軟膏との蜜月が、どれくらい続いたか、いまひとつハッキリしません。
1年か……長くても1年半だったと思います。
抗ヒスタミン剤の飲み薬の効果が薄れたよりずっとずっと早く、わたしは、少しずつ……ステロイドの塗り薬が効かなくなっているのを感じていました。
そもそも、たぶん、いちばん最初に塗ったときに感じたような、目を見張るような激変(効果)は、最初の1度っきりだったと思います。
そのうち、飲み薬もステロイド軟膏もあまり効かず、だましだまし、おさえきれない症状をおさえている、といった感じになっていました。
顔の調子もすっかり後戻りです。
そして、わたしは就職活動を始める時期になっていました。
通っていた近所の病院ではもうダメだ、と思ったわたしは、高2のときに一度行ったきりの、有名大学病院を思い出します。
もう頼れるところはそこしかありませんでした。
あの、飲むと気分の悪くなるカプセルの薬……。
でも、とってもよく効いた薬……。
きっと抗生物質にちがいない。あれをもらえば、と思ったのです。
なんか、わたしは借金に追われる債務者みたいになってきました。
とにかく、当面なんとかなれば……、そのあとは、なんとかしよう(きっとなんとかなるだろう)、みたいな。
結局、大学病院では、期待したカプセルの薬は処方されませんでした。
診察してくれた先生もちがっていましたし、5年近くたって、治療方針が変わったのかもしれません。
さまざまな疑問はありましたが、わたしはあれやこれや聞くことができませんでした。
ひどい見てくれをしていると、人に対して何か質問したり、積極的に働きかける力がなくなるのです。
いや、それより以前から、自分の体のことなのに、お医者さんに対して「病気や薬のことをきちんと聞く」という姿勢がまったくありませんでした。
もらったのは、飲み薬はなく、チューブに入ったステロイドの塗り薬のみ。
それまで近所の医院でステロイドの塗り薬をもらっていたときは、薬のラベルがはがされていましたが(←そういう時代でした)、大学病院でもらった薬のラベルははがされておらず、名前は覚えていませんが、丸囲みで「劇」、と記されていました。
そうか、これって、「劇薬」なんだな……、と思いました。
そして、このせっかくの劇薬は効きませんでした。
全身、ひどい状態でしたし、顔もまっかっかでしたが、だましだまし大学に行ったり、リクルートスーツを着て企業の説明会に参加したり。
気持ちだけで相当がんばりました。
でも、限界が近づいていました。
そして、とうとう外出できないような状態になります。