重症アトピー/だれかのせいにしない/気持ちの面でスタートに立つ
アトピーってつらい……。
軽症のアトピーはそれはそれでつらいけれど、重症のアトピーのつらさは、肉体だけじゃなく、精神がヒリヒリすりきれるみたいにつらいです。
かゆさ、痛さ、不快さ、体力の低下。
どれもこれもこたえるけれど、何よりつらいのは、自分が、とてもきたなく、みにくくなることです。これはつらい。ほんとうにたまりません。
ひどいときのわたしは、他人の目が気になる、なんてレベルはとうに超えて、鏡に映った姿を、とてもリアルとは思えず、自分で疑いたくなるくらいの無残さでした。
病気や災難にあった人は、程度の差こそあれ、「どうして自分が?」と思うものかもしれません。
わたしも思いました。
盛大に思いました。「どうして自分が?」
だって、あんまりにもひどすぎるからです。20代の前半といういちばん楽しいはずの時期に、誇張なしに、怪獣かゾンビのようにボロボロ。
つらくても、仲良しの友だちにうったえて、ヨシヨシなぐさめてもらうこともできません。怪獣状態だからです。
外を歩けば、だれもかれも、健康な肌をしています。
子どもだってお年寄りだって。テレビの中にだって、自分のような状態の人は一人だっていません。
なんで自分はこんな状態なんだ、なんで自分だけこんな目に合うのか、いくらなんでもひどすぎる、あんまりすぎる、って、くりかえし、くりかえし思いました。
家で一人でいるときには、吐き出すようにして、文字通り叫んでいたこともあります。
わたしの親は、二人とも(症状はほとんどないものの)、アレルギー体質です。
口には出さないものの、当然、わたしは親を……正確には親の体質をですが……、うらみました。すごーくうらみました。なんでアレルギー同士で結婚するんだよ、なんて……。
そしてまた、漠然と「理不尽な運命」みたいなものをうらみました。
過去に食生活がほんのちょっと乱れていたからって、それがなんなの?
甘いものやスナック、たまにのジャンクフードなんて、むしろ一般の人レベルじゃない?
肉体的、精神的なつらさは、小さな怒りとなって、ふつふつ胸の奥底に、いつもあるみたいでした。
だから、「どうして? どうして自分が?」と、ときには床をたたき、泣きながら、延々くりかえしていたのだと思います。
でも、あるとき急に気づいたのです。
不毛なくりかえし百回目にして、ようやく気づいたのかもしれません。
今の状態は、だれのせいでもない、結局、自分で引き受けなきゃいけなんだ、って。
わたしは、「しかたないんだ」と思いました。
それは、あきらめにも似ています。
でも、このときの心の変化は、治癒への大きな曲がり角だったと思います。
わたしは、ようやく自分に起きていることを、自分でなんとかしなくてはならないと向き合えるようになったのだと思います。